「以和為貴(和を以て貴しと為す)」は下原大杜氏の座右の銘。
もう10年以上も前、大杜氏に「いい酒ってどんな酒?」と聞いたことがあります。
その時の答えが「軽くて幅があって、調和の取れた酒だなぁ」と。
「調和の取れた酒を造るには蔵の調和が取れてなきゃなんねぇ。ギスギスしているとギスい酒になるし、穏やかだと穏やかな酒になる。調和の取れた酒を造るには蔵の和が大切だ」。
そんなことで大杜氏は聖徳太子の17条の憲法の第1条を酒造りの信条にしていました。
大信州ではさらにそこに解釈を加え、「和」とは、取り繕いや表面的な和気あいあいではなく「厳しさ誠実さの中から生まれる一致団結した真の調和」。
このラベルの字は下原大杜氏が書いたものです。
当時奥さんに「じいちゃん、人様の目に触れるもんだからみっともない字を書いちゃなんねぇ」と言われ、夜中まで付きっ切りでもう特訓させられたそうです。
「うちのばあさん、寝かせてくんねぇだよ」とぼやいていました。
おかげさまでこんなラベルになり、お酒とは全く関係ないこんな本にも紹介されてしまいました。
今年の「以和為貴」も調和のとれた絶品に仕上がっています。
(田中 隆一)